●「基礎演習」では、新入生の皆さんに専門分野の本や論文の読み方についてもお話ししています。
世の中には、あるテーマについて書かれた本や論文は星の数ほどあります。自分が論文を書くときには、それらの中から「これは」と思う論文や本をいくつか見つけ出し、それをメインの参考資料にして構想を考えることが少なくないと思います。
●では、良い論文や本はどのようにして見分ければよいのでしょうか。これについて、私が大学院の学生であった頃、ご指導頂いたE先生からおもしろいお話を伺いました。
論文というのは本来、今まで誰も解明できなかった謎や問題を解き明かすことを目的としています。そこでE先生曰く「その論文を読み終わったあと、『なんだ、そんなことだったのか』と思えるほどに明快に・簡潔に謎が解き明かされていたら、その論文は大方よい論文と考えていいだろう」と。なるほどそうかと、大変感心しました。
●この感覚、新入生の皆さんにはわかってもらえるでしょうか。
そうですね、例えば、とても良くできた推理小説を思い浮かべてみて下さい。最後の最後に名探偵(シャーロック・ホームズ、明智小五郎、金田一耕助、江戸川コナン・・・・など)が謎を解き明かしますね。そして謎が明かされてみると、結末に至る途中経過の中にあった実に何でもないことがらやちょっとした言動が、言われてみると犯人を示す決定的な証拠になっていたと気づかされます。それを聞いた瞬間読者は、「そうか、そうだったのか・・・・いやー、やられたな、お見事!!」と言いたくなるような思いをすることになります。これこそが、良い推理小説の典型です。要するに、完成度が大変高いということですね。そんな感覚と似ていると言ってもいいかもしれません。
●E先生から伺った話は、大学院のゼミの後、酒を飲みながらおもしろおかしく語られたものでしたが、実は、ものごとの核心に迫る深い話だと思いました。今でも強く印象に残っています。
(長谷部孝司)