◆私は、これまで大学で、共通教育のなかの基礎教養科目の一つである哲学担当の立場から、「正しく考える」ということの大切さと問題点を講義してきました。ここでは、授業の紹介を兼ねて、その一端をお話ししていきたいと思います。
◆これまで、実は「全体的に考える」・「本質的に考える」というテーマにそってお話ししているのですが、今回は第3回として「概念的に考える」ということについて話すことにします。
◆「概念的に考える」なんていうと難しく聞こえますが、簡単なことです。要するに人間は「ことばを使って考える」ということです。これが動物とは全く異なる水準で人間は考え行動できる原動力となっているものです。
人間は「ことば(記号)」によってものごと・できごとを一般化して抽象的に論理的に整理し関係づけてとらえ、理解し、把握することができるようになりました。それだけではありません。ことばによって知識を他人に正確に表現し伝達し蓄積することもできるのです。
◆「ことばを使って考える」ということを別の形で表現すると「概念的に考える」と言い変えることもできます。どういうことでしょうか。例を使ってお話ししましょう。今、机の上を見て「ここにリンゴが1個ある」と知ったとします。この時わたしが見たのは、机の上の1個のこのリンゴですが、しかし〈リンゴ〉ということばが表現しているのは、このリンゴA、あのリンゴB、そのリンゴC、あちらのリンゴD・・・・・・等々を一般的に〈リンゴ〉ということばで括って〈なし〉や〈みかん〉や〈いちご〉と区別して捉えて理解しているということです。それだけではありません。その時わたしは、このリンゴをなしやみかんやいちご等々と共通する〈くだもの〉として理解もしています。ということは、〈くだもの〉というものは〈魚〉や〈野菜〉や〈肉〉とは区別されたいい方であると同時に、それらとも〈食べもの〉として共通性をもっていると整理し理解し考えているということになっているのです。
◆このような〈リンゴ〉とか〈くだもの〉とか〈食べもの〉とかのことばの意味内容・本質的内実を「概念」といいます。人間は「概念的に考える」ことのできる動物とはこうしたことをいうのです。〈リンゴ〉・〈くだもの〉・〈食べもの〉はそうした概念の一つです。これは他の動物と人間との決定的な違いの一つです。人間は「概念的に考え行動する」ことができるからこそ学問・芸術・宗教・スポーツ等の活動ができるのです。科学と技術を発達させてこれたのです。宇宙船や飛行機やダムやコンピュータをつくった他の動物は存在しません。
◆ところで「概念的に考える」時に気をつけなければならない大切な問題がいくつかあります。これについては、次回お話しすることにします。
(哲学・倫理学 日山紀彦)