●少し前におもしろい本を見つけました。石川文子編『おとなを休もう』(桜蔭社、2003年)です。
昭和40年から平成16年までの小学校3・4生の『こくご』の教科書に掲載された作品の中から、掲載頻度の多いものを集めてまとめたものです。この時期だと、今の大学生が小学生だった時期と重なるのではないでしょうか。
●気になる順位は以下のようでした。
第1位 新美南吉「ごんぎつね」
第2位 今西祐行「一つの花」
第3位 あまんきみこ「白いぼうし」
ちなみに、第1位の新美南吉さんの作品は、第4位にも「手ぶくろを買いに」が入っていました。
●私の使った教科書には、残念ながらどの話も入っていませんでした。そこで早速、同書を買い求め、それら読んでみました。
ここでは第1位「ごんぎつね」を取り上げてみます。お話の中身は、多くの学生諸君がご存じと思いますので省略して、ちょっとした感想です。
●人は皆、何らかの思いを持って生きています。その思いはざまざまですが、仮に他者のことを思いやるすばらしいものであったとしても、残念ながら容易に他人には伝わりません。人の心の中は、決して見ることも見せることもできないからです。そこでそれが、時として多くの誤解を生み出し、大変不幸な結果をもたらすことにもなります。
人は社会をなして生きていますから、「わかり合うこと」がとても重要です。しかし、「わかり合うことのなんと難しいことか」ということを、つくづくと思い知らされるみごとな作品でした。
●他者と上手にコミュニケーションをとることは重要ですが、とても難しいものでもあります。人間関係に悩む若者には、ぜひ改めて読み直してみることをお勧めしたいと思います。
(長谷部孝司)