受験生のみなさん
残暑お見舞い申し上げます。
猛烈な暑さの続く今年の夏ですが、皆さんにとっては大学生活へ向かっての最後の夏休み、奮闘努力を祈念しています。
●さて、これまで私は本学の教養教育・基礎教育を担う共通領域部の「哲学」担当者として、授業の紹介を兼ねて、「考えること」の大切さ、とりわけ「正しく考える」上でのポイントとなるいくつか留意事項をお話ししてきました。今回は、私たちがものごとを判断し推理していく時におちいりがちな一寸した落とし穴の一つを紹介してみたいと思います。テーマは、「UFOは存在するか」をめぐる論争です。
●一般に,「UFOの存在」を信じて主張する人たちは、よく「UFOが存在しないということは科学的に証明されていないし、証明もできない」という理由をあげます。まさにその通りです。科学は「UFOは存在しない」ということを証明することはできません。
●しかしながら注意しなければならないのは、「UFOが存在しないということが科学的に証明できない」ということから「ゆえにUFOは存在する」という結論は出てこないということです。UFOの存在をこういう論法で、他のもっともらしい多くの理由をつけながら主張するやり方はよくあることです。わたしたちも、そういわれるとついついこの主張を受け入れてしまいがちです。
●もともと科学は確率的・蓋然的な真理は主張できますが、絶対的真理は科学の本性上決して証明できません。UFOについて科学がいえるのは、UFOの存在の証拠となるデータは95%以上科学的に誤っているということはいえますが、絶対的に存在しないということは断言できません。逆に「UFOは存在する」ということも科学的に証明できません。UFOを認める人もその存在を科学的に証明していません。
●結論的には、いずれにしても、UFOは存在するということも存在しないということも断言できないということ、つまり確率は低いけれどもひょっとしてあるかも知れないし、ないかも知れないということまでです。後の真実は夜の星座を見ながら大宇宙の神秘にふれながら、あったらいいなあ、おもしろいなあというロマンチックな夢を楽しむということでしょう。むきになってその存在を主張したり否定したりするのも大人気ないように思います。
●ただ「正しく考える」ということに関しての留意事項の一つとして「AはBではないということ」は証明されないが故に「AはBである」ということは正しくない、ということです。ただこのような論法は、日常よく用いられていて、問題が複雑な場合には、けっこうコロッと落ち込みやすい穴なのだということは心にとめておいて下さい。
●因みに、もう一つの落とし穴について!!
UFOというのは、「未確認飛行物体」ということで、科学的には今の所何であるかわからない飛行体という意味です。「地球外惑星から飛来した空飛ぶ円盤のようなもの」ということではありません。UFOの存在を主張する多くの人は、このようなことばの定義(概念規定)のすり換えを、無意識的ないしは意図的によくやっています。
この点にも注意を!
(日山紀彦)