働き方のルールを思いつくままに列挙すれば、社会人として働く場所では、①服装に留意すること、②笑顔の作り方を磨こう(米国でよく言われる)、③完壁な挨拶の仕方を身につけよう、④自信と精気に満ちた振舞いをしよう、⑥身嗜みに注意しよう、⑥落ち着いて話そう、⑦きちんとした文章を書こう、等などである。
人によって表現は千差万別であるが、一言でいえばいわゆる「躾(しつけ)」で、それはそのまま、働く場所を含め、あらゆるTPO(Time・P]ace・Occasion:時・場所・機会)で人々に要求されることである。学習という労働・作業を要求される大学でも同じことが要求されている。
個人主義の社会では、個人は自分の存在を明確に示さなくてはならない。立ち居振る舞いすべてに意を用いて、他人に気障りなことは厳禁である。こうした態度を維持できなければ社会は、その人を疎んずるだろうし、時にその存在は無視される。
80年代であったか、日本でも大学生を含む若者に対して、燃え尽き症侯群、モラトリアム人間などの概念でもって、その行動を理解しようとすることが流行った。四当五落(注1)、受験地獄と称せられた進学のための受験準備期間を過ごしてきた若者は、すでに燃え尽きているがゆえに、社会へ出て行く前の時間をしばし安穏と過ごしている。あるいは社会へ出る前のモラトリアム、すなわち執行猶予の時間なのだとしてかれらの有り様を容認しようとさえする考えが流布されたのである。多くの社会現象についてその出現の詮索は行われるが、問題解消の方法は提示されることが少ないように思われる。これら上述の現象についても同じであったと言わざるを得ない。
その結果、今日たとえば服装はファツションとして、20年前だったら"異装"として人々が目をそばだたせるようなものが、広く流行り、また人々の行動もまた上に挙げたような規範を欠き、解釈に困ることが大いにある。豊かさのもたらした異性体と解釈し、人々が自ら覚醒するときをまつべきなのかどうか。
学び舎である大学のキャンパスでも、もう一度道徳再武装運動(注2)を、はたまた日本的マネジメントシステムの売り物である3Sないし5S運動(注3)でも、起こさないといけないのかもしれない。
注1:睡眠時間4時間で試験合格、5時間では不合格とのたとえ。
注2:1930年代半すぎに、アメリカ合衆国で起こった社会運動。
注3:3S運動とは、整理・整頓・清掃であり、5Sとは、整理・整頓・清掃に清潔・修養を加えた運動。
■■■PROFILE■■■
岡田 和秀(おかだ かづひで)
経営学部経営学科教授
専門分野/マネジメントの国際移転、マネジメント教育
愛知学院大学商学部専任講師、助教授、教授、専修大学経営学部教授を経て、東京成徳大学経営学部教授に就任。