『病気を患った後の新たな希望はスポーツで』(市村操一・応用心理学部長による執筆)
西ドイツ・チュービンゲン大学から話をお届けしたい。
哲学者ヘーゲルがここで教えたり、ヘッセが『車輪の下』で回想した神学校時代を送った町である。ここでウルリケという女性スポーツ心理学者に会って、教えられることが多かった。
乳ガン手術後の女性にスポーツヘの参加をうながして、生きていく気力を充実させようというのが彼女の研究である。
乳ガンの手術を受けた人の中には、家に引きこもりがちになったり、洗濯物を干そうとして腕が自由に上がらないことにショックを受けて、落ち込んでしまう人もいるとウルリケは言う。
二年前にわずか三人の女性を相手に始めた体操の実験研究を地方新聞が応援してくれ、今では三十人の女性が参加している。乳ガン手術後の女性の体操への参加は、不安や無気力を低減し、社会的関心と接触を高めることが確かめられはじめている。
特に一人住まいの女性の場合、体操への参加が精神的健康さを高める効果が現れている。
ウルリケは心理学者であると同時に、効果的な運動を開発する体操デザイナーでもある。集団の体操ゲーム、音楽を使ったリズム運動、そして運動後の語らいの時間などが彼女のプログラムに入っていた。
(読売新聞 1987-88年連載コラムより)