カウンセリングを受けるとどうして良くなるのかという点はとても重要なポイントです。カウンセリングの何がクライアントにとって助けになったのかについて考えてみたいと思います。
ジョン・ノークロス(John Norcross)を中心とした米国心理学会(American Psychological Association)の29部会(心理療法)の特別委員会は、何が心理療法の効果に寄与しているか100以上の効果研究をまとめています。その中で、クライアントとセラピストの特性やどのような技法を用いたのかなど、面接過程に関わる様々な要因とそれらの効果の大きさを調べたところ、以下のように4つの要因に分類されることがわかりました。
まず、一つ目は「治療外要因」とされています。これは、心理療法とは直接関わりのないものであり、クライアントの回復にクライアントが元々持っているものが40%を占めるという結果でした。それは、クライアントが抱えている問題や障害の程度、あるいは治療に対する動機づけの高さ、どのくらい周りの人からサポートされているか、偶然の出来事をきっかけに良くなったか、などの要因が含まれています。いわゆるもともとクライアントに備わった自然治癒力とされています。クライアントの自然と良くなる力を引き出し、サポートすることがカウンセリングや心理療法では重要になってくるといえます。
二つ目は「治療関係」が挙げられ、これは心理療法を行ううえでクライアントとセラピストがどのくらい情緒的な関わりを結ぶことが出来ているか、治療の目標に関してお互いにどの程度、合意しているかなどを表しています。これは、クライアントとセラピストの相性と言っても良いでしょう。このセラピストの前であれば安心できるし、辛い話をしても受け止めてくれるといった治療的な雰囲気があるかということです。したがって、どんなにベテランのセラピストであれば良いとは限りませんし、経験の浅いセラピストであったとしてもそうした雰囲気であれば、問題解決へ容易に導くことさえあります。
三つ目は「特定の理論(例えば、精神力動的心理療法、認知行動療法など)や特定の介入法(例えば、リラクセーションなど)」が約15%占めるといわれています。このように、セラピストが用いる治療法は、比較的に小さい影響力であるとされます。これは、クライアントとの信頼関係と比べると、その効果の大きさは2分の1です。すなわち、ある特定の治療法で有名な専門家であっても、クライアントとうまく信頼関係を結べないのであれば、その治療法はあまり効果を発揮しえないということです。
四つ目は「プラシーボ(期待)」が約30%になっています。このプラシーボに含まれるのは、心理療法が問題を解決するのに有効であるというクライアントの期待や今の症状は改善するというクライアントの希望のことを指しています。言い換えれば、クライアントが心理療法について否定的な見方や極端に非現実的な希望や期待を持っている場合は、心理療法の効果を阻害することにつながります。
このように、カウンセリングや心理療法の中でとりわけセラピスト側に大事なことは、クライアントに安心して話してもらう雰囲気を作り出すということです。そして、もともとクライアントに備わっている自然治癒力を引き出し、良くなりたいという期待を阻害しないことが最大の効果につながることがわかります。
(臨床心理学科 石村郁夫)