どのようなカウンセリングを受ければ良いのでしょうか?前述したように、どのような心理治療でも結局はカウンセラーとの相性が重要と言ってしまえばそうかもしれません。カウンセラーとの信頼関係が非常に大事です。しかし、それでは、明確な基準もないし、どのようにカウンセラーを選んだら良いのか分からないというのが一般の方の意見ではないでしょうか。そこで、幾つかの基準があります。
一つ目は、米国心理学会の12部会(臨床心理学)によって推奨されている実証的支持を受けた心理治療(Empirically Supported Treatments: ESTs)という考え方です。この考え方は、厳密な研究手法によってその効果が実証されており、治療的にも根拠がある方法のことを指しています。例えば、うつ病、パニック障害、強迫性障害で悩んでいる方が認知行動療法を施行した場合、施行しなかった方よりも改善する確率が高いというデータが出ています。すなわち、ある症状で苦しんでいる人は、この治療法が最も効果的であると組み合わせを考えてながら選択する方法です。しかしながら、この基準はあくまでも参考資料として用いるものです。というのは、この基準を盲目的に信じ込んでしまい、全く自分に合わない治療法を受け続けるのは逆効果といえるからです。
このように、一つ目の視点は科学的に証明された心理治療を受けましょうという基準です。この基準は治療的な根拠があるために信憑性が高いといえます。しかし、逆に言えば、科学的に証明されない心理治療は信用ならないという立場となっています。そもそも科学というのは、人が長年の経験から編み出した仮説について言葉を使って実証する作業ですので、まだ解明されていない非科学的な現象についてはそれがどんなに有用だとしても軽視する傾向にあります。こころの悩みについても同じことが言えます。すなわち、実証科学を基礎とする西洋医学ではなく、鍼灸や漢方薬、気孔などをはじめとする東洋医学によって良くなることがあります。もちろん、現代科学によって東洋医学の治療機序が明らかになっていますが、昔はそうではありませんでした。経験的に編み出された技の集約と言えるものでしょう。役に立たない治療法は、時代の変化に伴って自然淘汰されるはずですが、現在まで残っているものはこころの悩みを改善するうえで本質をついたものかもしれません。
したがって、二つ目の基準としては、科学的な基準ではなく実際にカウンセリングを受けてみての感じの良さや雰囲気などの直感が頼りになります。実際に、癒されていると実感することが大事です。よくむやみにカウンセラーを交代するのは良くないと言われます。たしかにどうして相性が合わないかカウンセラーと話し合うことで抱えやすい対人様式についてはっとするような気付きを得るかもしれませんし、何らかしらの誤解がとけて関係が深まるきっかけになるかもしれません。しかしながら、むしろ我慢して相性の合わないカウンセラーと一緒に作業することこそ有害な体験(harmful experience)となる可能性があります。科学的な知見も大切ですが、本当に大事なのはこのカウンセラーと一緒に作業していけるかどうかです。あなたの直感も大事にしましょう。
(臨床心理学科 石村郁夫)