★悲しみが乾くまで(2008)「映画で感じるこころの世界」
2010年07月30日
スサンネ・ビア 監督 「悲しみが乾くまで」(2008) この映画では,最愛の人を失った悲しみ,すなわち「悲嘆」がテーマとして描かれています。 哲学者のアルフォンス・デーケンによると,このような「悲嘆」は,精神的な麻痺状態から怒りや空想などを経て少しずつ立ち直っていくプロセスを経ていきます。 ブライアンを失ったオードリーの精神状態は,まさにパニック状態でしたが,ジェリーに精神的に支えられることでパニック状態を脱することができたのかもしれません。パニック状態の時には,頭がぼんやりしたり,考えがまとまらなかったりするので,現実を直視することが難しいですが,オードリーはパニック状態を脱することで現実を直視することができるようになり,皮肉にもジェリーを追い出すことにしまったのかもしれません。 また,劇中ではジェリーが麻薬の離脱症状に苦しむ姿が描かれています。ジェリーは薬物中毒者の自助グループ(薬物中毒を体験した人が,自分の体験を語り合って支え合い,薬物中毒から脱出することを目的にしているグループ。日本にもあります)に参加して,自分なりに薬物から離れようとしますが,オードリーから見放された時に,ショックで自暴自棄になってしまい,その結果,再び麻薬に手を染めることになります。この映画では,麻薬は一度手をつけてしまったらなかなかやめることが出来ないこと,麻薬をやめようとすると,大きな苦しみが伴うことも描かれています。 最愛の人を失う苦しみを乗り越える過程で,人は誰かを傷つけてしまったり,自暴自棄になったりすることもあります。 突然の喪失であるほど,ショックもまた大きいものです。 映画では,オードリーはジェリーを傷つけ,ジェリーは麻薬に手を染めました。このような行動もまた,愛する人を失ったことによる反応なのであり,人間のもろさの現れなのかもしれません。しかし,最終的にはジェリーはオードリーに支えられることで,オードリーはジェリーを支えることで,再び新しい人生を歩き始めることができました。このように,人間はもろさだけではなく,立ち直っていく強さも持っているのだなぁと改めて思いました。 (臨床心理学科 山口正寛) |
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