「スポーツキャリア・デザイン~準備編~」
健康・スポーツ心理学科(予定)
出 雲 輝 彦
Ⅰ はじめに
皆さん、高校の卒業式は終わりましたか? 1ヵ月後には入学式ですね。お会いできる日を教職員一同、楽しみにしています。入学までのこの1ヶ月間は、とても大切な時期だと思います。それは、高校生から大学生へ頭の中のモードを切替える時期、大学生活を夢見る時期、大学生活の準備をする時期だからです。健康・スポーツ心理学科は、いわゆる体育・スポーツ系の学部・学科という範疇(はんちゅう)に入りますので、体育学部出身の私から、大学入学前の準備としての1つの材料(テーマ)を提供したいと思います。
Ⅱ スポーツキャリアとは何か
1.スポーツとは
スポーツ(sport)には幾つかの意味があります。サッカー、野球、テニス、バスケットボール、バレーボールなどの競技的な運動のことを指し示す場合や、それらを総称する意味もあります。また、運動する、体を動かすという「幅広い身体活動(physical activity)」としての意味もあります。スポーツキャリアの「スポーツ」とは3つめの「幅広い身体活動」として捉えてください。
2.キャリアとは
東京成徳大学では、1年次に「キャリアデザイン」という授業(必修)がありますので、詳しくはそちらで学んでもらいますが、簡単にキャリアについて説明します。
キャリア(career)は、一般的に職歴や経歴と訳されますが、人の生き方や働き方が多様化している今日、単に職業上の地位・実績・資格・能力等の連続性を指し示すだけではなく、仕事以外のさまざまな営みをも含む、人それぞれの人生上の足跡として考えることもできます。すなわち、キャリアとは、個々人の生き方そのものであり、わかりやすく説明すると「自分らしい生き方」ということになります。スポーツキャリアの「キャリア」とは「自分らしい生き方」として捉えてください。
3.スポーツキャリア
スポーツキャリアを文字通りに解釈すると、「スポーツに関する職業上の経歴」となりますが、前述の説明を踏まえ、ここでは「スポーツを(1つの)核とする自分らしい生き方」と定義することにします。(1つの)を挿入しているのは、自分らしく生きる上での核となるものは必ずしもスポーツだけではなく、その他にも核はある(あるいは、核をもつべき)という意味を込めているからです。
Ⅲ スポーツキャリア・デザインとは何か
デザインとは「設計する、計画する」などの意味があります。したがって、スポーツキャリア・デザインとは「スポーツを(1つの)核とする自分らしい生き方を設計(計画)する」ということになります。入学までの1ヶ月間であなたのスポーツキャリアを設計(計画)してきてください、と言いたいところですが、どうでしょうか? 難しいですよね……
金井(2002)は、キャリアを「馬車の辿ってきた道程を示す轍(わだち)」に例えています。轍とは「車の通ったあとに残る車輪の跡」という意味です。私もそうであるように、多くの人々にとって、自分の思い描く、あるいは目標とする生き方どおりに物事が運んでいくことは少ないです。むしろ、計画通りにいかないのが普通だと思います。要するに、「自分らしい生き方」とは、思い描いたものが絶対なるものではなく、数年後あるいは数十年後、自分の過去を振り返った時に自覚できるものが本当の「自分らしい生き方」なのだと言えるでしょう。過去の主要な決断、行動、経験等の点と点が、曲線であったとしても馬車の辿ってきた轍のように線で結ばれた時に、「あぁ、自分らしい生き方とはこういうものなのか」と実感できるのではないでしょうか。大切なことは、夢や目標に向かう計画のなかで、あるいは日々の生活のなかで、どのような考え方に基づき決断や行動をしてきたかということで、それがあってこそ点と点が線で結ばれるのだと思います。
健康・スポーツ心理学科へ入学するということは、スポーツキャリアのスタートを切るということになります。スポーツを核とする自分らしい人生が始まるのです。10年後、20年後、30年後、いつになるかわかりませんが、自分の辿ってきた道を振り返ってみたときに「自分らしい生き方という轍(わだち)」を確認したいですよね。
Ⅳ まとめ
大学4年間は、皆さんの人生を方向づける上で、とても大切な時期です。特に、健康・スポーツ心理学科の1期生となる皆さんには、スポーツキャリアをしっかりと築き上げていってほしいと思います。そのような意味で、健康・スポーツ心理学科のカリキュラムでは基礎的・専門的授業としてさまざまな講義、演習、実習等を用意しています。特に、理屈だけではなく実際に体を動かす実習を10個用意しています。しかしながら、スポーツキャリア構築の観点からすると、授業として行っている以上、それらは理論の修得という範疇に入ると私は考えています。大切なのは「理論」と「実践」の両輪の修得です。そして、この実践とは「4年間を通じたスポーツ実践」のことです。大学4年間、健康・スポーツ心理学について勉強するとともに、学内外を問わず「本格的」にスポーツに取り組むことが、皆さんの今後の人生に必ずプラスになると私は信じています。
最後に、「本格的」と書きましたが、その意味は、単に、余暇や楽しみだけで終わるものではないということです。あまり詳しく説明してしまうと、皆さんに余計なプレッシャーをかけてしまいますのでこれ以上言及しませんが、これまでの文章をよく読んでいただき、入学までに、あなたのスポーツキャリア・デザインについて考えてみてください。宿題です!
以上
※参考文献
金井壽宏(2002)「働くひとのためのキャリア・デザイン」PHP研究所