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最近の興味関心:「子どものいじめ加害・被害体験の長期的影響について」(濱口 佳和教授)


2026年9月25日
今年の1月に公表された文部科学省の統計では、令和6年度の「いじめ重大事態」の発生件数は過去最高の1,404件に上っています。「いじめ重大事態」とは、いじめのせいで子どもたちの生命・身体・精神・財産に重大な被害が生じたり、長期間学校に来れなくなってしまった事態を言います。子どもの心理臨床実務や、地方自治体のいじめ重大事態第三者委員の経験等から、いじめによる子ども自身、そして保護者や家族が被るマイナスの影響の大きさは、周囲が考えるよりもはるかに大きく、重くのしかかることを知っているので、予防と早期解消の重要性を強く感じます。

ところで、いじめは子どもの発達にどのような影響を、どれだけの期間にわたって残すのでしょうか?子どもの発達に関わる研究者としては大変気になるところです。

すでに、フィンランド、ノルウェー、オランダ、イギリス、ドイツ、オーストラリア等の諸国を中心に、大規模で長期間にわたる追跡調査が行われており、そこからさまざまな事実が明らかになっています。

例えば、ノルウェーで行われた研究では、14歳・15歳で被害者、加害者、加害・被害者としていじめに関与した人は、関与しなかった人に比べて、12年後の27歳時点での最終学歴が低く、不安・抑うつ傾向が高いこと、特に被害者は身体的健康を損なう傾向があることや、加害・被害者は不安・抑うつ傾向、反社会的傾向ともに高いことがわかりました。

また、フィンランドで行われた研究では、8歳の時点でのその子どものメンタルヘルスの悪さや行動上の問題の影響を除外しても、17年後の25歳の時点で、8歳の時に頻繁にいじめ被害を受けた女性は、いじめに関与しなかった女性より、自殺未遂・既遂のリスクが5.2倍に達することがわかっています。

以上のように、他のほとんどの研究でも、小学生や中学生の時点でのいじめの経験は、成人期早期まで、学歴、身体的健康、メンタルヘルス、反社会的傾向、そして自傷や自殺について、被害者、加害者、加害・被害者それぞれの立場に応じて、決して小さいとは言えない影響を及ぼしていることがわかっています。ごく最近では、このような長期的な影響が生じるメカニズムの検討が行われ始めており、今後どのような結果が得られるのか目が離せません。
教員プロフィール
濱口 佳和 応用心理学部 臨床心理学科 教授 博士(心理学) 公認心理師・臨床心理士
【所属学会】
日本教育心理学会、日本カウンセリング学会、日本心理学会、日本犯罪心理学会、日本心理臨床学会、日本児童虐待防止学会

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