2018年12月1日、『世界の子どもと子どもの絵』というテーマで、子ども学部
公開講座を開催いたしました。講師には長年「世界児童画展」の企画・運営に携
わってこられた穴澤秀隆先生(NPO法人市民の芸術活動推進委員会理事、前美術
教育雑誌「美育文化」編集長)と本学子ども学部准教授の直井崇先生を迎え、61
名の受講生が参加されました。
第1部は穴澤先生の講義でした。学校における近代美術教育の歴史を明治末期
の手本通りに描く「臨画」、大正時代の「自由画」、戦後教育の「児童画」へと
変わってきたことを、ヨーロッパでの絵画教育や社会状況(主に戦争)との関連
で概観されたうえで、現在を「造形遊び」の時代という第4の段階ととらえられ
るのではないかと話されました。
さらに、数多くの児童画を丁寧に見ることを通して、子どもの発達過程やジェ
ンダー、地域性などを知る手掛かりとなることを学びました。世界児童画展に出
展された数多くの絵からは世界の多様性と同時に人類の同一性が見いだせること
から、児童画は世界の共通言語といえるし、子どもの絵は万人の記憶ともいえる
というお話で締めくくられました。
第2部の制作は直井先生が担当されました。絵を丁寧に見ることを楽しもうと
いう第1部の復習(有名な絵画を使って、日ごろ見落としているところを発見す
る)の後、『カレンダーを作る』という課題に取り組みました。3・4月は自分
たちで絵をつくり、3・4月以外は世界児童画展に出展された絵を使うという設
定でした。
参加者は14グループに分かれ、世界児童画展の絵を選ぶことから始まりました。
それぞれの絵をどの月に使うかを話し合い、足りない月の絵を各人がクレヨンで
描きます。初めて会った人たちとの共同作業は大変だったと思いますが、受講者
の皆さんはテキパキと絵を描かれ始めました。でき上がったところで、数グルー
プが選ばれて前に出て、この絵をなぜこの月に充てたかなどの説明をしました。
今回の公開講座では、3時間の中に近代美術教育の歴史を知る、子どもの絵を
丁寧に見る、気づいたことを他者にわかるように伝える、自分の(3・4月の)
イメージを絵にする、他人と仕事を分担するという課題が含まれており、かなり
ハードだったと思いますが、もっと知りたい、さらに学びたいと刺激してくださ
る、学びの多い講座でした。