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授業紹介:学習・言語心理学


2023年12月13日
担当教員:茂呂 雄二教授

人々が上手に社会生活を送り、人生を豊かにするためには、言語(ことば)と学習(まなび)がとても大事になります。この授業では、具体的な事例をもとにしながら、ことばとまなびの発達支援について考えています。

その一つとして、ことばを使った心理研究のひとつとして、ピアジェの保存課題を取り上げています。テストという場面には、日常の生活世界の言語から離れた特殊な言葉遣いがあることについて気づいてもらい、他の学生と議論し考える単元を設けています。

ピアジェのテスト手続きを言語の問題としてみると、いくつか「おかしな」点が見えてきます。例えば同じ質問を繰り返すことです。ピアジェは、液体の量が容器を変えても変化しないと理解できることを「液量の保存」と言います。テストでは別の容器に移す前と後で、同じ質問を繰り返します。日常言語派と呼ばれる言語哲学者が明らかにしているように、同じことの繰り返しは、言外の意味をもたらします。事前事後テストとして、同じ質問を繰り返すのはテストの考えとしては当然ともいえますが、日常生活世界では余分なハレーションを招きます。このことは研究上でも問題にされて、ネオピアジェ派と呼ばれる研究者たちによっても批判と改善が行われてきたポイントの一つです。

受講学生達に保存テストを批判しながら、もっと発達の支援になるような手続きを考えてもらっているのですが、「そんな考え方もできるのか」と感心するような提案をもらうこともあり、楽しい時間です。

受講学生の感想

  • 同じ言葉の質問を2回繰り返すと、2回目の保存判断の質問では最初の質問の答えから変えた方がいいのではないか、と考えて等判断の回答とは違う回答をしてしまう可能性がある。実験者が量について知りたくて質問しているように子どもが感じられないなら、聞かれた子どもは、真剣に回答しない可能性がある。
    Bを移す容器はピアジェのテストでは縦長の容器だが、横長の容器に移して見せる実験も同じ子どもたちに実施してその保存判断と判断理由のデータも取った方が、子どもたちが保存課題を達成できるか確かめることにつながるのではないか。

  • ピアジェの前操作期から具体的操作期への移行は、子どもが部分対象としての現実的母の乳房を、良いものと悪いものとに完全に分けて捉えて、それらと食うか食われるかの双数決闘的関係を築く、エディプス第一の時、ないしはその前段階に対応していると考えられる。またこれは母の欲望の対象になることに腐心し子どもの主体が母の<法>に支配されてしまうという点で非常に危険な状態なので、<父の名>が導入され、象徴界が秩序づけられなければならないというのが50年代ラカンの基本的な主張である。個人的には精神分析と対応させることのできる理論として理解できるので、あえて批判する気にはならない。


(臨床心理学科)
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