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最近の興味関心:「カウンセリングにおけるホープ(希望)」(沢宮 容子教授)


2023年12月21日
ギリシャ神話に登場するパンドラの匣(Pandora's Box)の物語には重要な概念が含まれている。それは「ホープ(希望)」である。どんなに困難な状況に直面しても、ホープがある限り、人間は困難を克服し、未来に向かって進むことができる。パンドラの匣にはそんなメッセージが含まれている。

ホープという概念は、心理学の分野でも注目され、近年では、カウンセリングや心理療法の効果を左右する要因としてスポットが当たってきている(Gallagher & Lopez, 2018)。

Snyderが提唱したホープ理論によれば、ホープは「肯定的な目標指向的計画(pathways thought)と目標指向的意志(agency thought)の相互から派生した感覚に基づく認知的傾向」である。目標指向的計画は目標を達成するための計画を立てる能力を指し、目標指向的意志はその計画に従って行動を起こし、それを維持する能力を指す(加藤・Snyder, 2005; Snyder et al., 1991)。そして、この計画と意志は相互に影響し合っている。ホープが個人の心理的健康とどう関連しているかについては、多くの研究が行われ、その重要性が明らかにされている。

現在、世界は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響下にある。このパンデミックは社会的孤立、経済的苦境、健康への不安、喪失など、多くの人々にさまざまな問題をもたらしている。特に、コロナ禍の後には、クライエントがコロナの後遺症を克服するためにホープを求めてカウンセリングを受ける可能性が高いと目されている(Vostanis & Bell, 2020)。またDuncan, Hubble, & Miller(1995)によれば、ホープは効果的なサポートや治療の不可欠な要素であると指摘されており、Miller & Moyers(2020)の「Eight critical interpersonal skills)」にもホープが含まれている。

メンタルヘルスのニーズが高まっている今日、私たちカウンセラーはクライエントだけでなく、自身も大きな課題に立ち向かわなければならないという現実がある。絶望に抵抗し、ホープ(希望)を提供すること――それがますます大切になっていると感じる次第である。

教員プロフィール

沢宮 容子 応用心理学部 臨床心理学科 教授
筑波大学大学院博士課程修了 博士(心理学)
日本カウンセリング学会理事長 日本心理臨床学会常任理事 日本心理学会代議員 日本心理療法統合学会理事 寛容と連携の動機づけ面接学会理事 日本ポジティブサイコロジー医学会評議員 日本認知・行動療法学会
The Motivational Interviewing Network of Trainers (MINT)


(臨床心理学科)
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