高校生の質問にお答えしま⑪「最近の心理学の研究で、特に面白いものがあれば教えてください!」
2026年3月4日
このQ&Aコラムでは、毎回、高校生のみなさんからいただいた臨床心理学についての質問に、臨床心理学科の教員がお答えしていきます。
このQ&Aコラムでは、毎回、高校生のみなさんからいただいた臨床心理学についての質問に、臨床心理学科の教員がお答えしていきます。
Q17. 最近の心理学の研究で、特に面白いものがあれば教えてください!
回答者:茂呂 雄二教授
心理学の研究方法はさまざまに広がっています。伝統的な実験や観察などの方法以外に広がりをみせており、その中で「当事者研究」と呼ばれるトレンドが注目されています。これは、心理的な支援を必要としている人々、すなわち当事者自らが研究するという新しい研究方法です。通常、研究を行うのは専門的な訓練を積んだ研究者とされ、当事者はその研究成果の恩恵を受けるだけとされてきました。この研究対象者である当事者が、研究を実施するというやり方です。
当初、この当事者研究は、「精神障害や発達障害などの当事者(本人)が、自らの経験や困難について主体的に探究すること」を意味し、北海道の「浦河べてるの家」(精神障害者の自助グループ・施設)が中心となって始まりました。当事者自身が自分の生きづらさや症状、生活上の課題などを「研究」し、自己理解や自己変容、そして他者との関係改善を目指すものです。当事者研究とは、本人が「研究者」になり、同じ悩みを持つ人たちが語り合いながら解決法を探し、病気や困難の「受け身」ではなく、自分の人生を能動的に探究する実践です。
私も、このような当事者の実践に参加したことがありました。それは、つくば市の高齢者グループが行った当事者実践です。筑波大学人間系の研究施設「みんラボ(みんなの使いやすさラボ)」で行われた、筑波大学付属病院の使いやすさについての研究調査を行った「みんラボ研究チーム」の実践です。これまで大学病院に通った経験から、「自分たちで大学病院の使いやすさを調査してみたい」との意見が上がってきたことをきっかけに発足しました。(詳しくは、守下奈美子・原田悦子・茂呂雄二(印刷中).「高齢者グループの『研究者」パフォーマンスによる学び」茂呂他編『未来を創るパフォーマンス』東京大学出版会に掲載予定です。)
この試みは、心理学などの学術研究は「一体誰のものなのか」という問いに答える試みになっています。その答えは「みんなのもの」です。誰もが迎える「老い」とは何でしょうか。この当事者研究では、老いの意味づけを研究者や専門家任せにするのではなく、研究者や専門家と一緒に調査し考え直して、老いに新しい意味づけを与えたのです。
同時に、研究とは何か、学問とは何かに関しても、見直しを迫った実践だと言えます。特に心理学について、私は、大きなインパクトを持つ実践だと考えています。通常の心理学では、老いとは何かを客観的に明らかにする代わりに、老いとはこうだ、と固定してしまいます。しかし、この研究が示したことは、老いの意味はもっと豊かに創造的に意味づけ直しができるよということです。つまり、発達する老いに光を当てたのです。この視点の転換はすごいインパクトを持つものです。今後の心理学研究のあるべき姿を示すものになると確信しています。
(臨床心理学科)
心理学の研究方法はさまざまに広がっています。伝統的な実験や観察などの方法以外に広がりをみせており、その中で「当事者研究」と呼ばれるトレンドが注目されています。これは、心理的な支援を必要としている人々、すなわち当事者自らが研究するという新しい研究方法です。通常、研究を行うのは専門的な訓練を積んだ研究者とされ、当事者はその研究成果の恩恵を受けるだけとされてきました。この研究対象者である当事者が、研究を実施するというやり方です。
当初、この当事者研究は、「精神障害や発達障害などの当事者(本人)が、自らの経験や困難について主体的に探究すること」を意味し、北海道の「浦河べてるの家」(精神障害者の自助グループ・施設)が中心となって始まりました。当事者自身が自分の生きづらさや症状、生活上の課題などを「研究」し、自己理解や自己変容、そして他者との関係改善を目指すものです。当事者研究とは、本人が「研究者」になり、同じ悩みを持つ人たちが語り合いながら解決法を探し、病気や困難の「受け身」ではなく、自分の人生を能動的に探究する実践です。
私も、このような当事者の実践に参加したことがありました。それは、つくば市の高齢者グループが行った当事者実践です。筑波大学人間系の研究施設「みんラボ(みんなの使いやすさラボ)」で行われた、筑波大学付属病院の使いやすさについての研究調査を行った「みんラボ研究チーム」の実践です。これまで大学病院に通った経験から、「自分たちで大学病院の使いやすさを調査してみたい」との意見が上がってきたことをきっかけに発足しました。(詳しくは、守下奈美子・原田悦子・茂呂雄二(印刷中).「高齢者グループの『研究者」パフォーマンスによる学び」茂呂他編『未来を創るパフォーマンス』東京大学出版会に掲載予定です。)
この試みは、心理学などの学術研究は「一体誰のものなのか」という問いに答える試みになっています。その答えは「みんなのもの」です。誰もが迎える「老い」とは何でしょうか。この当事者研究では、老いの意味づけを研究者や専門家任せにするのではなく、研究者や専門家と一緒に調査し考え直して、老いに新しい意味づけを与えたのです。
同時に、研究とは何か、学問とは何かに関しても、見直しを迫った実践だと言えます。特に心理学について、私は、大きなインパクトを持つ実践だと考えています。通常の心理学では、老いとは何かを客観的に明らかにする代わりに、老いとはこうだ、と固定してしまいます。しかし、この研究が示したことは、老いの意味はもっと豊かに創造的に意味づけ直しができるよということです。つまり、発達する老いに光を当てたのです。この視点の転換はすごいインパクトを持つものです。今後の心理学研究のあるべき姿を示すものになると確信しています。
(臨床心理学科)
