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臨床心理学科 石村 郁夫准教授がSociety for Psychotherapy Research第57回国際年次大会で口頭発表を行いました


2026年7月2日
臨床心理学科の石村 郁夫准教授が、6月26日に立命館大学で開催された心理療法研究学会(Society for Psychotherapy Research: SPR)の第57回国際年次大会にて、口頭発表を行いました。

SPRは、心理療法の効果やプロセスを科学的に検証する世界中の一流の研究者や臨床家が集う、国際的に最も権威のある学会の一つです。今回は初のアジア・日本開催となり、「心理療法の再想像:アプローチと文化を超えたイノベーションに関する対話(Reimagining Psychotherapy: A Dialogue on Innovations Across Approaches and Cultures)」をテーマに世界各国から多くの専門家が集まり、活発な議論が交わされました。

石村准教授は、近年世界的に注目されている「コンパッション(思いやり・慈悲)に焦点を当てた心理療法」について、長年取り組んできた一連の研究プロジェクトの成果を包括的に発表しました。

発表内容の概要

うつや不安を抱えるクライアントに対して「自分に思いやりを向けましょう」と促すアプローチは非常に有効である一方、臨床現場では、温かさを向けられることに対して逆に恐怖や強い抵抗感(FBRs)を抱き、パニックやトラウマの記憶が呼び起こされてしまうクライアントの存在が大きな課題となっていました。

石村准教授らの研究グループは、この課題を解決するために以下の3つのステップにわたる検証結果を発表しました。
  1. 測定:研究1
    他者から温かさを向けられた際の拒絶感や心身の防衛反応を事前に予測して測定する「思いやり反応尺度(CRS)」を独自に開発し、その信頼性と妥当性を検証しました。
  2. アプローチの工夫:研究2
    抵抗感が強い人に対して、従来の頭の中で優しいイメージを描く方法(瞑想等)を行うと、恐怖に注意が乗っ取られてしまい効果が出ないことを証明しました。一方で、実際に手を動かして文字にする「手紙作成法」を取り入れることで、注意が現実につなぎとめられ、防衛反応を回避して安全にセルフ・コンパッションを高められることを実証しました。
  3. 臨床モデルの構築:研究3
    精神科の既往歴がある方や抵抗感が強い方は、従来の心理療法のマニュアルにある「呼吸法」や「マインドフルネス」といった初期の段階(はしごの最下段)ですでに身体的な緊張や呼吸のしづらさを感じていることをデータで明らかにしました。だからこそ、一律のマニュアルに頼るのではなく、セラピスト自身が思いやりを体現(プレゼンス)し、クライアントの疲労回復を優先しながら「適切な量(適切なステップ)」で進めていく個別最適化モデル(コンパッションのはしごモデル)の重要性を提唱しました。

今回の発表は、世界中のセラピストが直面している「マニュアル通りの介入がうまくいかない」という臨床上の大きな悩みに明確な科学的根拠と具体的な解決策を提示するものであり、会場の専門家からも高い関心と評価が寄せられました。

本学臨床心理学科では、こうした国際的な最先端の研究知見を日々の教育や臨床現場の発展に活かしてまいります。

(臨床心理学科)
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