高校生の質問にお答えします⑲「Q:心理士はどのようにして自分のメンタルを保っているのですか?」
2026年9月9日
このQ&Aコラムでは、毎回、高校生のみなさんからいただいた臨床心理学についての質問に、臨床心理学科の教員がお答えしていきます。
このQ&Aコラムでは、毎回、高校生のみなさんからいただいた臨床心理学についての質問に、臨床心理学科の教員がお答えしていきます。
心理士はどのようにして自分のメンタルを保っているのですか?
回答者:中村 聡美特任教授
よく、「心理士は心のプロなので落ち込むことはないでしょう?」と言われたりしますが、そのようなことはありません。ここぞという場面で失敗すれば落ち込みますし、大事にしていたものを失くしたら悲しくなりますし、理不尽に責められたら怒りもします。そのような時は、皆さんと同じように、信頼できる家族や友人に話を聴いてもらうことで心が落ち着くことは多いです。心理カウンセリングは、その延長線上にあるともいえるでしょう。
さて、ご質問の、「心理士のメンタルの保ち方」についてですが、心理士は心のメカニズムについての知識があるため、自分の心の動きや状態から程よく距離を置き、冷静にそれらを見つめる(専門用語で、メタ認知といいます)ことに慣れています。加えて、クライエントの抱える悩みについて、跳ね返す考えや方法を日々一緒に考えることが、自然と自分のメンタルのバランスを保つトレーニングにもなっているように感じます。
ネガティブな感情から距離を置き、バランスを保つ方法の一つに、マインドフルネスという技法があります。マインドフルネスとは、「今この瞬間に起こっていることに集中していて、よけいな考えにとらわれない状態のこと」です。私たちは、「昨日のテストはまったくできなかった…点数が悪かったら親に怒られるし友達にも呆れられるに違いない…人生、これまでも、これからも、良いことなんて何もない…」など、気づくと様々なことをぐるぐると自動的に考えてストレスを感じています。マインドフルネスでは、その自動的に流れてくる過去や未来についての考えを、今この瞬間に意識を向けて切り替えることで、ストレスに対処します。
この技法には二つのルーツ、仏教の伝統的な瞑想と、それをもとにしてつくられた医学的なプログラムがあり、それらが相互に影響し合って現代の形に発展してきました。後者の医学的なプログラムは、1979年にジョン・カバットジンがマサチューセッツ大学メディカルセンターで始め、その後、1990年初頭に、精神保健領域で活用できるように改変され、マインドフルネス認知療法(MBCT)と呼ばれています。
マインドフルネスには、簡単な瞑想からトレーニングを必要とする瞑想まで幅広くあります。興味を持ったら、気になる書籍を参考に実践してみるのもよいでしょう。
余談ですが、私は先日、けんちん汁の発祥の寺といわれている鎌倉の建長寺で座禅を組みました。僧侶から警策(けいさく)で軽く肩を打たれると、背筋が伸びて意識が「今・ここ」に向き、心の中の乱れが穏やかに整うように感じました。禅寺まで足を運ばなくても、今いる場所で、自分にやさしく意識を向けて、ゆっくりと呼吸をしながら、胸や腹が膨らんだりへこんだりする変化に集中していると、様々な考えに振り回されないでいられるかも知れません。
参考図書:
「図解 マインドフルネス瞑想がよくわかる本」 監修 有光興記 講談社
「自分でできるマインドフルネス 安らぎへと導かれる8週間のプログラム」 マーク・ウィリアムズ ダニー・ペンマ 創元社
(臨床心理学科)
よく、「心理士は心のプロなので落ち込むことはないでしょう?」と言われたりしますが、そのようなことはありません。ここぞという場面で失敗すれば落ち込みますし、大事にしていたものを失くしたら悲しくなりますし、理不尽に責められたら怒りもします。そのような時は、皆さんと同じように、信頼できる家族や友人に話を聴いてもらうことで心が落ち着くことは多いです。心理カウンセリングは、その延長線上にあるともいえるでしょう。
さて、ご質問の、「心理士のメンタルの保ち方」についてですが、心理士は心のメカニズムについての知識があるため、自分の心の動きや状態から程よく距離を置き、冷静にそれらを見つめる(専門用語で、メタ認知といいます)ことに慣れています。加えて、クライエントの抱える悩みについて、跳ね返す考えや方法を日々一緒に考えることが、自然と自分のメンタルのバランスを保つトレーニングにもなっているように感じます。
ネガティブな感情から距離を置き、バランスを保つ方法の一つに、マインドフルネスという技法があります。マインドフルネスとは、「今この瞬間に起こっていることに集中していて、よけいな考えにとらわれない状態のこと」です。私たちは、「昨日のテストはまったくできなかった…点数が悪かったら親に怒られるし友達にも呆れられるに違いない…人生、これまでも、これからも、良いことなんて何もない…」など、気づくと様々なことをぐるぐると自動的に考えてストレスを感じています。マインドフルネスでは、その自動的に流れてくる過去や未来についての考えを、今この瞬間に意識を向けて切り替えることで、ストレスに対処します。
この技法には二つのルーツ、仏教の伝統的な瞑想と、それをもとにしてつくられた医学的なプログラムがあり、それらが相互に影響し合って現代の形に発展してきました。後者の医学的なプログラムは、1979年にジョン・カバットジンがマサチューセッツ大学メディカルセンターで始め、その後、1990年初頭に、精神保健領域で活用できるように改変され、マインドフルネス認知療法(MBCT)と呼ばれています。
マインドフルネスには、簡単な瞑想からトレーニングを必要とする瞑想まで幅広くあります。興味を持ったら、気になる書籍を参考に実践してみるのもよいでしょう。
余談ですが、私は先日、けんちん汁の発祥の寺といわれている鎌倉の建長寺で座禅を組みました。僧侶から警策(けいさく)で軽く肩を打たれると、背筋が伸びて意識が「今・ここ」に向き、心の中の乱れが穏やかに整うように感じました。禅寺まで足を運ばなくても、今いる場所で、自分にやさしく意識を向けて、ゆっくりと呼吸をしながら、胸や腹が膨らんだりへこんだりする変化に集中していると、様々な考えに振り回されないでいられるかも知れません。
参考図書:
「図解 マインドフルネス瞑想がよくわかる本」 監修 有光興記 講談社
「自分でできるマインドフルネス 安らぎへと導かれる8週間のプログラム」 マーク・ウィリアムズ ダニー・ペンマ 創元社
(臨床心理学科)
