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本学OBと石村郁夫准教授が優秀論文賞を受賞しました!


このたび、東京成徳大学大学院博士後期課程を修了した阪無勇士さん(現在は昭和学院短期大学人間生活学科こども発達専攻 助教)と、東京成徳大学応用心理学臨床心理学科の石村郁夫先生が、7月3日(土)に開催された日本ヒューマン・ケア心理学会において「第4 回日本ヒューマン・ケア心理学会 論文賞」を受賞しました。

受賞された論文のタイトルは「一時保護所の生活に児童が安心・安全を感じるプロセス―被虐待児が求める受容的な関わり方―」です。

論文審査委員からは、「地道に堅実に研究を発展させた姿勢」や、「児童対応に悩む職員の行動に研究的裏付けのある貴重で具体的な示唆を与えた」こと、また、「児童の安寧」、「多様な福祉・教育等の現場への応用可能性」などが高く評価されました。

※受賞講演スライドの表紙

そこで、研究代表者である阪無さんに受賞した感想と今後の意気込みを伺いました!
以下、阪無さんからのコメントです。

虐待やネグレクトを受けた子どもたちの緊急保護の場所として、一時保護所があります。令和元年度では約2万7814人の子どもが一時保護所に入所しており、そのうち、虐待を理由に入所した子どもは約1万6853人、子どもの2人に1人以上が虐待を受けた経験があります。さらに、虐待を受けた子どもの心の傷は深く、約3人に1人でトラウマ症状が見られ、癒されない傷つきは問題行動として現れます。

私自身もそうですが、子どもたちの力になりたいと願う職員は多くいます。しかし、2018年に提示された国の指針「一時保護ガイドライン」では、子どもにとってどのような関わり方が必要であるのか、その具体的な内容までは示されていません。調査研究を概観しても、秘匿性が強ために調査の進まない状況が続いていました。つまり、一時保護所が設置されてから70年以上の歴史があるにもかかわらず、子どもにとって本当に必要な関わりは何であるのかは、未だ明らかにされていない状況が続いたのです。

そこで、私は一時保護所に10年着任し、組織との信頼関係を築きながら7つの研究を行い、子どもと職員が置かれた状況を整理するとともに、一時保護所の支援モデルを築きました。本研究では、この支援モデルに基づく関わり方が、実際に子どもの安心感・安全感を高めるのかどうかを調査しています。調査の結果、子どもへの適切な関わり方である「児童中心の関わり」と、子どもに悪影響をもたらす「職員中心の関わり」が明らかとなりました。

この研究結果を踏まえて、私は既に「児童中心の関わり」によって子どもが癒され、「職員中心の関わり」を行う職員自身が様々な傷つきを抱えていることを明らかにした研究を行いました。さらには、研究に基づく職員研修を行い、研修によって「児童中心の関わり」が増えることも明らかにしています。そして今は、全国の一時保護所に向けて、現場職員のニーズに近い研修や職員支援の方法を明らかにする調査を行うところです

※全国の一時保護所154カ所に向けた資料発送の様子(8/31現在)

一時保護所の現場を離れていても、保護所愛は今も変わりません。その理由は、人生を恨みたくなるような状況で、それでも前向きに頑張る子どもと出会ったからです。そんな子どもたちの力になろうと、悩みながらも頑張り続ける職員さんにも、数多く出会いました。ドラマのような日々を、私は昨日のように覚えています。現場の先生方には、ぜひ力を合わせて頑張りましょうと伝えたいです。もちろん、虐待は社会の問題なので、未来を担う東京成徳の後輩たちにも期待しています。

最後になりますが、近年の社会的養護の領域では、子どもの権利擁護が盛んになりつつあります。現場のニーズに近い研究を行うことそのものが、子どもや職員に対する権利擁護の取り組みと考えられるのではないでしょうか。得られた成果は、必ず実践へと還元し、今後も一時保護所の発展に貢献していきます

ご興味をもっていただけたら、気兼ねなく、お問い合わせいただけますと幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

阪無先生、熱のこもったコメントをありがとうございました。

今後益々のご活躍をお祈り申し上げます。

(臨床心理学科)
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