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西村 昭徳


西村 昭徳(にしむら あきのり:応用心理学部 臨床心理学科)
主な担当授業:心理学研究法、学校心理学、教育相談
専門:スクールカウンセリング、教師のメンタルヘルス

スクールカウンセリングにおけるコラボレーション

スクールカウンセリングの実際と課題

スクールカウンセリングは、相談にきた子どもたちの悩み事を扱うというイメージが強いと思います。しかし、実際は、子ども、先生、保護者、地域の方々など多くの人々によって学校教育が成り立っていますので、学校というコミュニティ全体を理解し、支援体制を作っていくことが重要になります。
近年は、教師一人で対応しきれいない複雑な問題が増加しており、学校・家庭・地域が“連携”して子どもへの対応を進めていくことが、これまで以上に求められています。カウンセラーと学校関係者の有効な連携の在り方を解明してくことが私の研究テーマです。

カウンセラーと教師の異なる視点とチームワーク

特に、スクールカウンセリングでは、カウンセラーと教師の連携の在り方が、子どもに対する援助の質を左右します。カウンセラーは、じっくりと丁寧に子どもの話しに耳を傾け、教師は、子どもに具体的な指導をする。このように、異なる立場や役割をもつ者同士であるため、両者の間に、子どもの問題のとらえ方や具体的な対応方針について“くい違い”が生じることが少なくありません。
専門性や立場の違いから生じるくい違いに対して、どのように対処していくことがカウンセラーと教師のチームワークの強化につながるのでしょうか?

チームワークを向上させるための考え方

カウンセラーと教師のように、他職種がチームとして活動する際に生じる葛藤(くい違い)には、関係葛藤(あの人苦手だなというような感情)、課題葛藤(仕事の内容に関するくい違い)の2種類があると言われています。関係葛藤はチームワークを低下させるが、課題葛藤は、チームワークの向上につながる可能性があることが示されています。
カウンセラーと教師のチームワークが優れ、子どもに対してよい援助が出来ているチームは、関係葛藤よりも課題葛藤に焦点化した話し合いが行われていることがわかっています。また、お互いの役割や立場の違いを認め合っていることが明らかになっています。
今後も、役割や立場が異なることを活かす方策を模索しながら、学校の相談機能を高める活動に貢献していきたいと考えています。

教師を支えて、学校を支える―教師のメンタルヘルス支援―

日本の学校組織と教師

みなさんは、学校の先生との間にどんな思い出がありますか?面白い先生、厳しい先生、優しい先生、色々な持ち味をお持ちの先生方がいらしたことでしょう。学校内での仕事が細分化されている諸外国に比べ、日本の学校組織は、教師が多重役割をもちやすいと言われています。担任、生徒指導、部活の顧問、行事に向けた準備、保護者対応など、一人の先生が何役もこなされているのが現状です。みなさんが、普段の生活の中で目にする先生方の姿は、役割の一部分に過ぎないかもしれません。

教師のメンタルヘルス問題の現状

近年、教師の多忙化が一因と考えられる、メンタルヘルス悪化の問題が社会的に懸念されています。病気で休職する教師の中で、精神疾患者の割合が6割以上を占めているのです。教師のメンタルヘルスが悪化することは、教師個々の健康上の問題に止まらず、児童生徒への対応や学校運営上も大きな影響を与えることになり、学校全体の機能低下を招く深刻な問題です。
教師のメンタルヘルス改善に向けて具体的な介入策を見出していくことは極めて重要で、学校コミュニティを支える専門家に期待が寄せられています。私も、スクールカウンセラーとして、研究者として、教師のメンタルヘルス支援に取り組んできました。

バーンアウトからみた支援の方向性

教師をはじめ、看護師や介護士、ソーシャルワーカー等、対人援助職者のメンタルヘルスの指標として、バーンアウトという言葉が使われることが多くあります。バーンアウトとは、他者を支えるためのエネルギーが過度に要求され続けた結果、極度の疲労と感情の消耗、仕事への嫌悪感、思いやりの喪失などが引き起こされる状態のことです。教師の場合、「負担感や疲労感が蓄積して情緒的に消耗すること」や「認められたり支えられたりして得られる個人的達成感が減退すること」が、バーンアウトの予兆になることがわかっています。さらに、バーンアウトが深刻化すると、苦しい状態に対処するため、仕事から距離を置き、冷淡な態度をとるようになります。心身の疲労の状態を定期的にチェックし、予兆の段階で早めに気づくことがバーンアウトの深刻化を防ぐためには重要になってきます。
子どもたちが充実した学校生活を送れるように、その担い手である先生たちを応援していきたいと切に思います。
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