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田尻 由起


田尻 由起(たじり ゆき:短期大学幼児教育科)
主な担当授業:保育内容総論、子どもの文化と言葉、子どもの理解と援助
専門:発達心理学、保育・幼児教育学、特別支援教育

子どもの育ちに寄り添う「子育て」を支援するということ

子育ての多様化

現代社会において、子育ては非常に多様化してきています。また様々な状況に心配や不安、困り感などをもって子育てをしている保護者も多くいます。そんな保護者を支援しながら、子育てがより楽しく、ポジティブに行えるように支援をすることは、とても大切です。

子どもの育ちや保護者の子育てを支援する仕組み

子どもの育ちの確認や保護者の子育てを支援する制度のうち、日本が世界に誇る制度の一つに乳幼児健康診査(乳幼児健診)があります。乳幼児健診では、単に身体の成長の確認や疾病等の早期発見だけではなく、様々な子育てに悩みや心配を相談し、解決するという機能も持っています。

乳幼児健診では、本当に多くの保護者が相談にやってきます。これまでの経験からまとめると、①仕事と子育ての両立への不安、ワンオペ育児の大変さ、身近な支援者(保護者の親やきょうだい)の不在、などの子育て環境の問題や不安、②トイレットトレーニング、卒乳、食事、などの子どもの生活や自立に関する問題、③言葉の遅れ、行動面(活発すぎる、衝動的、不注意など)の幼さ、社会性(目が合わない、友達と遊べない、など)への心配など、子どもの発達に関する心配、④外国にルーツを持つ保護者や子どもの、言語や文化・慣習の相違による心配、⑤保護者自身の子育てに向かう気力や精神力、体力の減退、⑥その他、と、本当に内容は多岐にわたります。

キーワードは「子どもの育ち」と「子育ての伴走者」

ただ共通していることは、「わが子の育ちを願う保護者の気持ち」があり、「子育てを楽しみたい」「もっとできることがあるはず」、だから「専門家の意見を聞いてみたい」、「できることは何でもしてあげたい」という保護者の気持ちや願いがあります。そんな保護者の気持ちに寄り添いながら子育てを支援し、子育ての伴走者となることで、子どもの育ちを支え、保護者が前向きに子育てに取り組むことができるよう、支援をすることが大切です。

海外と日本の子育てのカルチャーギャップに直面した海外生活

外国と日本は国が違うので、もちろん言葉も文化も違います。つまり、子育ての文化や慣習も違います。例えば、以前フランスに住んでいた際に驚いたことの一例をあげると、添い寝はしない、どんなに遅くても 6 か月で卒乳、離乳食にバターを使用する、離乳食でお米は便を固くするので使用しない、歯固めの代わりにフランスパンの皮の部分を使用する、などがあります。乳児期の育児の文化や慣習だけでもかなりの違いがあります。

また、フランスで出会った日本人のお母さんたちが、口をそろえて「メトロ(地下鉄)に乗るための階段にエスカレータが付いていないんですよ!、でもその場にいる誰かが必ず助けてくれるから、全然困らないんです」「バスにベビーカーごと乗っても嫌な顔されないどころか、みんな場所を空けてくれるんです」といい、フランスでの子育てのしやすさについて話してくれます。日本では近年、公共交通機関におけるベビーカーの扱いについて、たびたび議論が巻き起こりますが、フランスでそのような議論は皆無です。一方で、車いすユーザーの外国の友人が日本に留学してきた際に、「なんで日本に留学しようと思ったの?」と聞いたら、「だって、日本の交通インフラは最高で、手伝いなしに一人でどこへでも出かけられるんだもん、パラダイス!」と言っていました。

子育てにおいては、生活スタイル全般、インフラの整備状況から始まり、子育てに関する信念、子どもの発達に対する知見、社会における障害児者の受け止め方など、国や地域によって異なります。もちろんフランスと日本でも違います。ですが、子どもの親はみな、自分の生まれ育った文化と、住んでいる地域の文化を併せ、自分たちの一番心地よいスタイルに組み合わせて、子育てを頑張っています。

これは日本の保育園や幼稚園、認定こども園に在籍する「外国にルーツのある子どもや家族」にも当てはまると思っています。ここが日本だからと言って、日本の文化や慣習を相手に押し付けていいのか、彼らの文化や慣習をどの程度、私たちは理解しているのか、しようとしているのか、彼らに寄り添う姿勢を持っているのか、これからの保育、幼児教育にも問われる姿勢だと思っています。
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